NOONCALL STUDIO

そうそう、あの匂い。あの


2017年05月22日

 

 

風の音が聞こえてくる

雨の音も交じり出す

急いで洗濯物を干す女

「なんでこのタイミングで干すんだよ」

「洋服も水浴びしたい時があるはず」

「だったら洗濯機に入れればいいだろ」

「せっかくなら外の気持ちのいい時に水浴びした方がいいじゃない」

「臭くなっちゃうよ」

「そうかな」

「洗濯したことないの?」

「毎日してるよ」

「じゃあわかるでしょ」

「わかるよ。臭くなるんでしょ」

「うん。あのなんともいえない匂いは嫌いなんだ」

「あの何とも言えない匂いね」

「そう何とも言えない匂い」

「どんな匂い?」

「嗅いだことないんだろ」

「あるよ。今はなんだか急に思い出せなくなってるの」

「そういえば匂いって説明するの難しいよね。相手が同じ匂いを想像するのと違う気がする」

「同じ料理食べてても?」

「そう」

「カレー」

「カレーの匂いは簡単だよ」

「食べる種類によって違うものね」

「そうか」

「お味噌汁は?」

「もっと簡単なものがいいな」

「ん~ラーメン」

「何ラーメンかによるでしょ」

「それもそうね」

「これは。白米の味」

「白米に味なんてないよ」

「キミは何を言ってるんだよ。白米に味はあるじゃないか」

「その時の私って鼻が詰まってたのかも」

「それでもわかるよ」

「他のは?」

「匂い」

「匂い」

「匂い」

「匂い」

「あの時の匂い」

「あの時の匂い」

あの脇の間からにじみ出る汗の存在を感じたあの真昼の日。

うそ。

夏に人の匂いなんてそんなに感じない。

くさい匂いしか思い出さない。

誰が臭かったのか、それとも私が臭かったのか。

そんなことはどうでもよくて。

あの学校の帰り道。

で好きな男子とすれ違う時。

にべっとりと付けたシーブリーズの匂い。

私には何がいい匂いなのか

あれって目が染みるから。

私目薬の代わりにしてたもん。

あのシーブリーズ男子は私から「目薬くん」なんてあだ名をつけられていたっけ。

アッ、思い出した!