NOONCALL STUDIO

あの木はひとりで生きている


2017年03月26日

 

 

あの木は一人で生きている

あの木は話さない

口もついていない

なんてつまらない木なのだろう

あの木は話さない

なんと寡黙なのだろう

あの木は動かない

肩は凝らないのだろうか

あの木は小便もしなければ決して主張もしない

なんと傲慢なのだろう

服も着なければ理論武装もしない

なんてくだらない存在なのだろう

どうしてあんなくだらない形をしてるのだろう

カサブタのような得体のしれない皮を被り、生きてるのか死んでるのかもわからない

いつからそこにいるのかも、どんな景色を見てきたのかもわからない

何人の汚い手で触れられたのだろう

あの木はセックスもしなければキスの味もわからない

そもそもキスの味とはなんなのだろう

水を含んでいるのだろうか

ああ見えて針で刺したら破裂でもするのだろうか

炎の中に放り込んだら何かが打ちあがったりするのだろうか

何万人もがそれを見あげて、同じ行動をするのだろうか

あの木は何かの可能性を秘めているのだろうか

あいつは

あいつは今にも走り出しそうで

今にも倒れそうで

今にも泣き出しそうな

誰かにいつも見られてるような

レオタードなんて着させたら踊りだすだろうか

水着なんて着させたらあの遠くの島まで泳ぎ切るだろうか

考えただけでもおかしい

どうせあいつも一人なら友達の一人にでもなってやろうか

いつもと同じ日常を僕らは、歩き続ける

今この通り過ぎる人たちが生きているのか、死んでいるのか

私たちに知る由もない

あの人たちが死んでいるのか

生きているのか

私たちに知る由もない

どうせ他人

どうせ人生

どうせ

どうせこの黒目の中で今も生きている

血のつながりも一般人もそこらの乞食も

この黒目に映る人間はみんな一緒

みんな所詮一緒

からだの中のあの獣はどこに潜んでいるかわから